その顔の違和感、顔面神経麻痺かもしれません

こんにちは、青木です。
7月中旬となり、暑い日が続いていますね。
体調を崩しやすいこの時期は、疲労やストレスがきっかけとなって、さまざまな不調が現れることがあります。
突然、顔が思うように動かなくなり、不安や戸惑いを感じている方がいらっしゃいます。
今回は、顔面神経麻痺に対する鍼灸治療についてご紹介します。
本ブログでは、鍼灸治療がどのように回復をサポートできるのかを、分かりやすくお伝えしていきます。
顔面神経麻痺の概要
顔面神経麻痺とは、何らかの原因により「顔の表情を動かす役割を担う顔面神経」の働きが障害され、顔の筋肉が思うように動かなくなる状態を指します。多くの場合、突然発症し、顔の片側だけに症状が現れるのが特徴です。
具体的な症状は、口角が下がる、目が閉じにくい、額にしわを寄せられない、食事中に飲み物が口からこぼれるなどの症状がみられます。
これらは見た目の変化だけでなく、会話や食事、対人関係にも影響を及ぼし、日常生活や精神面への負担が大きい疾患といえます。
顔面神経麻痺は適切な時期に正しい治療を行うことで、多くの方が回復を期待できる疾患ですが、治療が遅れることや、治療が不適切であった場合には後遺症が残ることもあります。そのため、正しい知識を持ち、段階に応じた治療を行うことが非常に大切です。
顔面神経麻痺の原因とメカニズム
顔面神経麻痺の原因はさまざまですが、いくつか挙げていきます。
ベル麻痺
最も多いタイプがベル麻痺で、全体の約6〜7割を占めるとされています。
ベル麻痺とは、突然発症する末梢性の顔面神経麻痺の一種で、明らかな原因が特定できない顔面神経麻痺を指します。
〇主な症状
・多くは片側の顔に急に起こる
・口角が下がる、表情が作りにくい
・目が閉じにくい、まばたきができない
・額にしわを寄せられない
〇主な原因
ベル麻痺は「原因不明」とされていますが、近年では
単純ヘルペスウイルス(HSV-1)の再活性化が関与していると考えられています。
ウイルスの影響で顔面神経に炎症やむくみが起こり、骨の中の狭い通路(顔面神経管)で神経が圧迫されることで、神経の働きが低下し、麻痺が生じるとされています。比較的予後が良好とされています。
ハント症候群(ラムゼイ・ハント症候群)
ベル麻痺に比べて症状が重く、回復に時間がかかる傾向があります。
〇主な症状
・耳の中や耳の周囲の強い痛み
・耳介・外耳道・鼓膜周辺の水ぶくれ(発疹)
・耳鳴り、難聴
・めまい、ふらつき
・味覚障害
・症状が重く出やすい
〇主な原因
ハント症候群は、帯状疱疹ウイルス(VZV)が主な原因です。
なお、顔面神経麻痺全体では、中耳炎・頭部外傷・腫瘍・脳卒中などが原因となることもあります。
メカニズムはベル麻痺同様に、ウイルス感染などで神経に炎症やむくみが生じることで、神経が圧迫され血流や神経伝達が障害されます。
この圧迫が続くことで、顔の筋肉に正しく指令が届かなくなり、麻痺が起こると考えられています。
ベル麻痺とハント症候群の違いを一言でまとめると…
ベル麻痺→痛みや発疹が少なく、比較的回復しやすい
ハント症候群→耳の症状・痛みを伴い、重症化しやすい
顔面神経麻痺の現代医療
現代医学における顔面神経麻痺の治療は、早期診断と急性期治療が非常に重要です。
まず問診や神経学的検査を行い、必要に応じてMRIやCTなどの画像検査で、脳卒中や腫瘍といった重篤な疾患を除外します。
治療の中心となるのは薬物療法です。発症から特に72時間以内に、ステロイド薬を用いて神経の炎症やむくみを抑えることが、回復率を高めるとされています。
ウイルスの関与が疑われる場合やハント症候群では、抗ウイルス薬を併用します。
また、目が閉じにくくなることで角膜が傷つきやすくなるため、点眼や眼軟膏、眼帯などによる眼の保護も欠かせません。
回復期には、医師や専門職の指導のもとでリハビリテーションが行われます。ただし、過度な表情筋トレーニングは、後遺症(病的共同運動など)を引き起こす可能性があるため注意が必要です。
顔面神経麻痺に対する鍼灸治療
鍼灸治療は、顔面神経麻痺に対して現代医療を補完する治療法として用いられます。
目的は、神経そのものを直接治す治療ではありませんが、回復しやすい身体環境を整えることで、回復をしっかり支えていきます。
〇鍼灸治療で期待できる効果
・顔面神経周囲の血流改善
・麻痺した表情筋の機能回復促進
・後遺症(ひきつれ・共同運動)の予防
※症状の程度や時期により、治療内容は調整します。
急性期~回復期初期(発症から数週間~数ヶ月程度)には、顔面への強い刺激や強い電気治療は避けます。
過剰な刺激は炎症を助長し、後遺症のリスクを高める可能性があるため、慎重な対応が必要です。
治療内容は、全身の血流改善や自律神経の調整を中心とした施術を行います。
回復期以降は、顔面部への施術を段階的に取り入れ、表情筋の萎縮予防や筋緊張の調整を行います。浅い鍼や温和な灸、必要に応じた低刺激の鍼通電などを用い、左右差の改善や自然な表情の回復を目指します。
後遺症がみられる場合には、過緊張している筋を緩め、動きにくい筋を促通するなど、状態に応じた施術を行います。
では、実際に使用する経穴(ツボ)を紹介していきます。
「翳風(えいふう)」
耳周囲の血流を促し、顔面神経の走行部への負担軽減を目的に用いられます。
「下関(げかん)」
頬や顎まわりの筋緊張を整え、口元の動きの改善をサポートします。
「頬車(きょうしゃ)」
表情筋のこわばりを和らげ、口角周囲の動きを助ける目的で使われます。
「地倉(ちそう)」
口元の左右差や口角の下がりに対して用いられる代表的な経穴です。
「迎香(げいこう)」
鼻周囲から頬にかけての循環を整え、顔面部全体の調整に役立ちます。
「四白(しはく)」
目の下周囲の筋緊張を整え、頬部の血流改善を図ります。
「陽白(ようはく)」
額周囲の動きやまぶたの開閉に関わる調整に用いられます。

※症状や時期により、使用する経穴は異なります。
これらの経穴は、顔面神経の走行や血流、自律神経の調整を考慮して選択します。
顔面神経麻痺は、早期の医療対応が回復の鍵となる疾患です。
顔面神経麻痺が疑われる場合は、まず医療機関を受診し、その上で鍼灸治療を併用することが大切です。
鍼灸治療は、医師の診断・治療と併用することで、回復を支え、後遺症の予防や生活の質の向上に寄与します。
気になる症状や不安な点がある方は、どうぞお気軽にご相談ください。
