鍼治療VOL.1 「初めての方へ」
初めて鍼治療を受ける場合、身体に「はり」を刺すことを注射針と同じようなイメージがあり、不安や抵抗を感じる方もいらっしゃるかと思います。実際、鍼と注射針は目的や太さ、形状も異なるので、鍼治療を受けた患者様からは「気持ち良かった」、「いつ鍼を入れたのかわからなかった」などのお声も頂いております。
まず最初に、鍼と注射針でどのような違いがあるのか、また鍼の安全性についてご説明していきたいと思います。
鍼と注射針の相違点
太さの比較
鍼治療に使う鍼の太さは0.10~0.24mm。注射針は0.40~1.60mmです。注射針と比較してみても、鍼治療で使う鍼の細さがお解りいただけると思います。このようにとても細い鍼を使用しますので、鍼治療では(鍼を刺入時に)ほとんど痛みを感じません。
初めて鍼治療を受ける方の中には、「注射針」をイメージされる患者様が実際に多くいらっしゃいます。注射針をイメージしてしまうと、「痛そう」、「怖い」と思ってしまっても仕方がないですよね。(僕自身も、注射針を何本も刺されるのは嫌ですからね。)
他にも比較してみますので、初めて鍼治療を受けられる方には、ぜひ安心して治療を受けていただきたいと思います。
種類 | 太さ |
蚊の針 | 約0.05mm |
髪 | 約0.05~0.15mm |
鍼 | 約0.10~0.24mm |
裁縫針(縫い針・標準) | 約0.5mm |
シャープペンの芯(標準) | 約0.5~0.7mm |
注射針 | 約0.4~1.6mm |
形状
鍼治療が痛くない理由として、鍼先の製造精度に大きな違いがあります。
鍼治療用の針は皮膚に対して刺入することを重視して製造されている為、鍼表面は非常に滑らかに処理されており、鍼自体も丈夫に作られています。一方、注射針は内容物を目的の深さ(部位)まで筋肉や血管を切り裂いて刺入するため、ある程度の強度が必要とされ、痛みが生じやすい形状になっています。
安全性
医療機器などの滅菌に使用されるガスのEOG(エチレンオキサイドガス)により、高い無菌性が保証されています。また、使用する鍼はディスポーザブル(使い捨て)で、一度使用した後は破棄するため、衛生面でも安全です。品質も高く、折れ曲がり、引抜き強度試験などを実施し、使用期限も決められています。また、鍼治療はWHO(世界保健機構)も認めており、効果的な治療法で、国家資格を有する者のみが治療しております。
治療効果
痛みの緩和
鍼治療を行うと痛みの閾値(いきち)を変化させ、神経の一部を遮断することで痛みを感じにくくします。痛みの閾値とは、人が痛みを感じとるレベルの事です。
例えば、痛みの閾値を「10」とし、その人に対して「背中をさする、頭をなでる」といった刺激のレベルは「1~3」程度となり「10以下」なので痛みとは感じません。しかし、強い衝撃を受けた場合には痛みとして感じます。 例を挙げると、ぎっくり腰になった、頚を寝違えたなどは、痛みの閾値を超えてレベルは「10」を上回り、痛みとして認識されます。ですが、鍼治療をすると本来痛みの閾値が「10」だったところを「11以上」に変化させ痛みを感じにくくするのです。
回復能力(自己治癒力)の向上
鍼治療の刺激で体内では「異物が入ってきた」、「細胞が傷ついた」と認識し、血行促進、血中酸素量の増加、新陳代謝が高まります。また、脳内では鎮痛物質が放射され身体の痛みや不調が軽減されます。 他にも、免疫力の向上、筋疲労の回復、抗炎症作用など多くの能力が上昇します。
筋肉の弛緩(筋収縮の緩和)
鍼治療は緊張している筋肉を直接刺激することで、筋肉を緩める効果があります。
人間の身体は強い痛みがある時、周囲の筋肉が収縮し固くなる「筋収縮」が防御本能により起こります。それが原因となって痛みを誘発している事があります。そのため、患部周囲の筋肉を弛緩させることにより痛みの緩和に繋がります。
実際の治療に際して
ここまで鍼治療の安全性や効果について述べましたが、不安が残る方もいらっしゃると思います。
当院では患者様と治療前に相談させていただき、鍼の細さ、長さ、刺激量、本数や金額などをご説明し、納得していただいたうえで治療方針を組み立てて参ります。