椅子に座ると片側の腰が痛い、正座は痛くない。痛い方を下にして眠れない・・・これは「仙腸関節炎」かもしれません。

仙腸関節とは、上半身と下半身のあいだの衝撃を吸収したり、骨盤を安定させる役割を担っています。
「検査を受けても腰痛の原因がわからない」などの原因がはっきりしない腰痛でお悩みの方は多いかもしれません。
実は腰痛を抱えている方の4人に1人が、仙腸関節炎(仙腸関節障害)が原因とも言われています。
今回はこの仙腸関節炎についてお話しします。
仙腸関節炎とは
仙腸関節は上半身の重さや地面からの衝撃を常に受けているため、中腰での作業やいつもと異なる動作、または繰り返しの負荷などで関節に微小な緩みや硬さが生じ、痛みが発生します。

仙腸関節炎は出産後の腰痛に多いと言われますが、決して稀な症状ではなく、10代から80代までの男女にみられます。やや女性に多い傾向があります。
また、普段からカバンを同じ肩にかける、座る際に同じ方の足を組むなど、骨盤に対して左右で異なる力が加わると発症リスクが上昇します。
パトリックテスト・ニュートンテスト・ワンフィンガーテストなどの整形外科的テストを用いて症状を確認します。
仙腸関節炎の症状
仙腸関節炎の痛みについてまとめてみました。
・臀部、腰の痛み
・太もも、足の付け根、下腿の痛み
・動き始めの痛み
・長時間立っていると痛い
・長時間座ると痛い(正座は痛くない場合がある)
・階段の昇降で痛い
・歩行時に痛む方の足を前に出しにくい
・片足に重心をかけると痛い
・大股で歩くと痛い
・仰向けで寝ると痛い
・痛みのある方を下にして寝ると痛い

仙腸関節炎の原因
〇けがによる損傷・・・転倒や交通事故、コンタクトスポーツなどにより、仙腸関節に急激な力が加わり炎症を起こします。
〇長時間の座位(座り仕事など)・・・デスクワークなどで長時間座り続けると、仙腸関節周囲の筋肉が硬くなり、関節への負担が増大します。
〇無理な姿勢・・・足を大きく前後に開らいたり、体を捻る動作や中腰などの無理な姿勢は、仙腸関節に過度の負担をかけ、炎症を引き起こします。
〇座位で足を組む習慣・・・足を組むと骨盤に歪みが生じ、仙腸関節への負担が増大します。
〇体重の増加・・・標準体重より増加してくると、仙腸関節への負担が増大し、炎症のリスクが高くなります。また、おなかの脂肪は腰椎を前弯させ、仙腸関節への負担が増していきます。
〇重量物を持ち上げる・・・重い物を持ち上げる動作は、仙腸関節に大きな負荷をかけます。これにより炎症のリスクが高まります。
〇出産・・・出産時に仙腸関節周囲の靭帯が緩み産道を拡げますが、出産後も靭帯が緩んだままになっていると仙腸関節炎を引き起こすことがあります。
〇筋力の低下・・・仙腸関節周囲の筋力が低下すると、関節を十分に支えられなくなり、負担が増大します。
自分でできるセルフケア
ドローイン
お腹の奥の方にある「腹横筋ふくおうきん」と呼ばれるインナーマッスルを強化するトレーニングです。この筋肉がしっかり働くと、仙腸関節のズレを防ぎ、痛みを抑えることができます。
腹式呼吸で筋肉を強化していきます。立つ、座る、寝る(仰向け)など、どの状態でもできて、覚えると簡単にトレーニングが出来るようになります。ここでは仰向けのやり方を説明します。
1. リラックスした状態で仰向けになり、両ひざを立てる。
2. 鼻から息を吸い、おなかをふくらませる。
3. 口をすぼめて、10秒間以上かけて息をゆっくり吐く。このとき、おなかを最大限に凹ませるように、ゆっくりと息を吐き切る。
4. 息を吐き切ったら、ゆっくりと息を吸い込み、おなかを元に戻す。
5. 2~4の動作を10回を目安に繰り返す。
慣れてくるまでは、お腹の上に丸めたタオルなどを置いておくとお腹の動きがよく分かります。


ストレッチ
骨盤や股関節の動きを良くすることにより、仙腸関節にかかる負荷を軽減することができます。
ハムストリングスと腸腰筋のストレッチが有効です。
それぞれ、15秒間×3回を週3回程度おこなって下さい。


治療
物理療法・・・電気治療、超音波治療
手技療法・・・仙腸関節の調整、腰と梨状筋のマッサージ、ストレッチ
骨盤ベルトやコルセットのご提案をする場合もあります。
治療期間は3~5週間程度が多いのですが、重度の場合は数カ月を要する場合もあります。

仙腸関節炎は重症化すると、日常生活に大きな影響を与えることがあります。
症状が軽い段階での治療をお勧め致します。