「肩は動かせるのに腕を上げると痛い」それはインピンジメント症候群かもしれません

前回のブログで少し触れました「インピンジメント症候群」について今回はお話ししたいと思います。
インピンジメント症候群とは?
インピンジメント(impingement)とは「衝突する」・「挟み込み」という意味です。
肩の関節で何かがぶつかり合うことにより痛みや動かしにくさが出る病気です。
では何がぶつかっているのでしょうか。
それは肩関節の間が狭くなり、肩を構成する上腕骨と肩峰、腱板、滑液包が衝突することにより起こります。

主な原因
インピンジメント症候群の原因はスポーツや仕事、姿勢、加齢などが原因とされています。
スポーツ・仕事
野球やテニス、水泳など、腕を頭上に上げる動作が多いスポーツや、頻繁に重い荷物を持つ作業など、肩に負担がかかる動作を繰り返すことで、肩関節に炎症が起こりやすくなります。
姿勢
猫背などの姿勢が長時間続くと、肩周囲の筋肉が緊張したり硬くなり、筋肉の連携がうまく作用しなくなる事によって関節の動きが悪くなります。これによりインピンジメントを起こしやすくなります。
加齢
40歳以降になると、肩周りの筋肉や腱が自然と衰えてきます。これにより腱板の柔軟性が低下し、不安定性が発生し、インピンジメントを起こしやすくなります。
主な症状
インピンジメント症候群は四十肩・五十肩とは異なり、痛みはあるものの肩を動かす事ができます。(痛みにより動かしずらくなることはあります)
ここではインピンジメント症候群の主な症状を確認しながら、四十肩・五十肩との比較も見て行きましょう。
| インピンジメント症候群 | 四十肩・五十肩 | |
| 症状 | 腕を上げる時の痛み 60度~120度で痛みが強くなり、それを超えると軽減する | 腕を上げる時の痛み 可動域制限がある |
| 可動域制限 | 特になし 痛みにより動かしずらくはなる | あり |
| 夜間痛 | あり 特に痛い方を下にすると痛みが強くなる | あり |
| 年齢 | 好発年齢なし スポーツ選手や上肢を頻繁に使う仕事の方に多い | 40歳~60歳 |
| その他 | 一定の角度でひっかかり感や音が鳴る | 安静時もジンジン痛みを感じることがある |
セルフチェック法
ここでは2種類のインピンジメントテストをご紹介します。
Hawkins-Kennedy test(ホーキンス・ケネディテスト)
①肩関節外転90°、肘関節90°屈曲位とします。検査者は肩甲骨をしっかり安定させます。
②検査者は受動的に内旋させます。


判定基準・・・②で痛みが出たら陽性。肩峰下インピンジメントが疑われます。
Neer test(ニアテスト)
①検査者は上肢を受動的に内旋、回内させます。検査者は肩甲骨をしっかり安定させます。
②検査者は肩関節屈曲運動を他動にて誘導していきます。


判定基準・・・②で痛みが出たら陽性。肩峰下インピンジメントが疑われます。
治療
インピンジメント症候群では、肩関節周囲のストレッチと筋力強化が最も有効です。
特にインナーマッスルであるローテーターカフ(回旋筋腱板)の強化が重要です。
ストレッチとトレーニング法については次回(新年第1回目)のブログでご紹介します。
物理療法:電気治療(低周波、中周波)、超音波治療
手技療法:マッサージ、運動療法、ストレッチ
鍼灸:肩関節周囲の筋緊張が強い場合は行う場合があります。
治療期間は個人差がありますが2~3カ月位を要します(症状によっては3カ月以上必要)。初期にはスポーツの休止期間が必要な場合もありますので、患者様のご理解が必要になります。

インピンジメント症候群は放置すると腱板損傷や断裂につながるため、早期の対応が非常に重要です。
肩に違和感を感じましたら出来るだけ早期にご相談ください。
