2週間以上、下痢や腹痛が続く・・・下痢への鍼治療とは。<後編>

こんにちは、青木です。
前回は下痢についてお話し致しましたが、今回は東洋医学においての下痢に対する考え方とその治療法についてお話しします。
東洋医学での下痢の考え方
東洋医学では下痢のことを「泄瀉(せっしゃ)」ともいいます。下痢は身体の臓腑や機能の失調など様々な原因により発生します。
また、便の状態もお身体を診る上で大事な所見となり、3段階で言い方を変えています。
溏泄(とうせつ):大便が固形をなさず、泥状便を排泄する状態。
泄(せつ):便が希薄で出たり止まったりしている状態。
瀉(しゃ):便が非常に希薄で水様便を指します。泄よりも希薄。
下痢発生メカニズムの5つの分類
外邪(がいじゃ)による下痢
外邪とは細菌やウイルスのような概念ではなく、季節や環境の変化といった自然現象が「邪」となり、身体に侵入し病気を引き起こす考え方です。
外邪は、風邪(ふうじゃ)、寒邪(かんじゃ)、暑邪(しょじゃ)、湿邪(しつじゃ)、燥邪(そうじゃ)、火邪(かじゃ)と6つ存在し、これら6つを「六淫(ろくいん)」と呼びます。
本来は無害な自然現象も、身体が弱っている状態や自然現象が極端に強い場合に外邪となって身体に入り病気を引き起こします。
中でも、寒邪、湿邪、暑邪、熱邪が関連していると言われ、それぞれ単独で発生するとされています。
偏食による下痢
油もの、生もの、冷たいものの過食で下痢が発生する状態です。これらの過食は臓腑である「脾」と「胃」にダメージを与えてしまい脾胃の機能が低下することで下痢が起こります。
では、「脾」「胃」がどのような機能をしているか軽く説明していきます。
脾は、「運化(うんか)」、「昇清(しょうせい)」、「統血(とうけつ)」の役割があります。
運化作用は、飲食物の消化吸収と栄養の生成を行い全身へ運搬します。
昇清作用は、栄養や気(生命活動の根源的なエネルギー)を身体の各部位に引き上げ、内臓を下垂から守ります。
統血作用は、血液が血管外に漏れ出ないように保つ働きで、これが弱ると出血しやすくなります。
東洋医学における胃の役割は、飲食物を「腐熟(ふじゅく)」と「和降(わこう)」させることです。
腐熟とは飲食物を消化しやすい形に変える働きです。それらを次の脾や小腸へ送る働きを和降といいます。
肝鬱気滞による下痢
「肝鬱気滞(かんうつきたい)」とは、精神的ストレスなどによって「肝」の気の巡りが滞ることで、イライラ、抑うつ、消化不良、月経不順など様々な心身の不調が引き起こされる状態を指します。
肝には疏泄という作用があり、体内の「気」や「血(血液を含む栄養素全体)」を全身にスムーズに巡らせる働きをします。しかし、肝鬱気滞では、この疏泄作用が上手く作用せず脾胃にも影響を与えることで下痢が起こります。
脾胃虚弱(ひいきょじゃく)による下痢
脾胃虚弱とは、消化器系統の機能が低下し、飲食物からの栄養吸収が上手くいかなくなった状態を指します。
脾胃虚弱は、「労倦(肉体的・精神的な疲労)」や「久病(きゅうびょう)」、「食べ過ぎ」などが主な原因と言われています。
久病とは、長期間にわたる慢性的な病気です。これは、ストレスなどによって心身のバランスが乱れ、気虚(気の不足)や気滞(気の滞り)を伴いやすいです。
腎陽虚(じんようきょ)による下痢
久病や老化で「腎気」や「腎陽」が虚する(抵抗力が低下する)ことで、脾陽を補助できなくなり下痢が発生します。
腎気とは、両親から受け継いだ生命力で、成長・発育・生殖をつかさどるエネルギー全てを指し、腎陽は身体を温め、生命活動を維持する根源的なエネルギーの事です。
これらのエネルギーを上手く管理し、全身を温めている作用が、脾の機能である「温煦(おんく)作用」になります。
温煦作用が虚している状態は「腎陽虚」とも呼ばれ、温める力が弱まることで、腹部や手足の冷え、下痢、むくみなどの症状が現れる状態です。
治療
〇病院での治療
病院での下痢の処置は原因によって異なる為、原因に合わせた治療を行います。
急性下痢の場合は、脱水予防のための点滴や整腸剤、抗菌薬などが使われることが多いです。
慢性下痢の場合は、大腸カメラなどによる検査で原因を特定し、その疾患に合わせた治療が行われます。
原因がウイルスや細菌の場合は自己判断で下痢止めを使用せず、まずは医療機関を受診することが重要です。 特に元気だが症状が長引くなど、回復の兆しがみられない場合は大きな疾患が隠れていることがある為注意が必要です。
当院での治療
当院では過敏性腸症候群(IBS)や潰瘍性大腸炎、自律神経の乱れなどによる下痢など、非感染性の下痢の治療になります。
「感染性の下痢」や「感染が疑われる発熱や嘔吐、血便を伴う場合」は、先に病院を受診してください。
下痢の鍼灸治療は、「胃腸の機能改善」と「自律神経の調整」を主軸に治療します。
治療は東洋医学の考え方を重視し使用する経穴(ツボ)を決定します。
今回のブログでは、先ほど前述した「脾」と「胃」の失調が多い為、脾胃機能の改善に使う経穴(ツボ)と精神的ストレスや自律神経の改善が期待できる経穴(ツボ)を紹介していきます。
脾胃機能の改善
「中脘(ちゅうかん)」や「関元(かんげん)」、「公孫(こうそん)」、「脾兪(ひゆ)」、「胃兪(いゆ)」などです。
効果は、腸の蠕動運動を整え胃腸の血液循環の改善、鎮痛効果などです。
自律神経の調節
「合谷(ごうこく)」、「内関(ないかん)」、「天枢(てんすう)」、「太衝(たいしょう)」、「足三里(あしさんり)」
自律神経の乱れからくるイライラや精神的なストレスを下げる効果があります。



症状によって、鍼治療かお灸での治療を決定します。
