上肢や背中の痛み・痺れ、手のむくみや冷えなど、いろんな症状が出る・・・それは「胸郭出口症候群(TOS)」かもしれません。

今回は腕や背中におこる様々な不調の原因の一つである胸郭出口症候群についてお話しいたします。
胸郭出口症候群ってどんな病気?
まず、胸郭出口とは、首の付け根から、鎖骨、肩の付け根にかけての部位をいいます。
そこを神経(腕神経叢)、動脈(鎖骨下動脈)、静脈(鎖骨下静脈)が走行しています。

胸郭出口症候群は、腕を上げる動作を行った時に、神経や血管が圧迫または牽引されて、手がしびれたり、冷たくなったり、むくんだり、力が入りにくくなったりする病気です。
首の筋肉(斜角筋)の間、第1肋骨と鎖骨の間のように狭い場所を通過するため、圧迫を受けやすくなっています。
胸郭出口症候群は3つに分類されます。
①神経性胸郭出口症候群(nTOS)
②動脈性胸郭出口症候群(aTOS)
③静脈性胸郭出口症候群(vTOS)
このうち、①神経性胸郭出口症候群(nTOS)が90%以上を占めます。
では、それぞれを見ていきましょう。
①神経性胸郭出口症候群(nTOS)
nTOSの特徴は、腕を挙上しなくても(挙上すると増悪)、肩や鎖骨の周囲、腕、首、背中に痛み、だるさ、痺れを感じます。また、後頭部に痛みを感じることもあります。
その他、手に力が入りにくくなり、物を落としてしまう事が多くなります。
②動脈性胸郭出口症候群(aTOS)
aTOSの特徴は、腕を挙上すると手が蒼白になり、手首での脈が触れなくなります。
腕を下げると蒼白から赤色に変わり、数分で元に戻ります。
aTOSは無症状であっても動脈瘤などを発生するため手術が行われます。
③静脈性胸郭出口症候群(vTOS)
vTOSの特徴は、突然上肢のはれ(紫色)やむくみが発生します。また、自覚症状はありません。
改善することもあるようですが、肺塞栓症を発症する場合もあるので、多くの場合は手術が行われます。
また、上記①~③以外に、頚肋(肋骨は胸椎から存在しますが、頚肋では下位頚椎にも肋骨様組織が存在)、第1肋骨疲労骨折や鎖骨骨折後の仮骨形成など、骨が原因になり発症する場合もあります。
どんな人がなりやすいの?
男性より女性の方が圧倒的に多く、20代から50代にかけて多く発症するようです。
〇なで肩
〇姿勢不良(頭が前に出る、背中や腰が丸くなる)
〇重労働
〇上半身の筋トレ
〇重たいリュックを常用する方
〇手を上げることが多い職業(美容師、大工、電気設備の仕事など)
〇手を上げることが多いスポーツ(バスケットボール、バレーボール、野球、バドミントン、テニス)
TOSをチェックするテスト法
モーレーテスト

鎖骨の上のくぼみの部分を叩いたり押して腕にしびれや痛みが出たらTOSの可能性があります。
左右差を比べてみるのが大切です。
ルーステスト


写真のように腕を上げた姿勢を保持して、手をグーパーグーパーさせます(①→②→①)。この動作を継続する間にしびれが出たり、だるくなったりして、やめると症状が回復する場合はTOSの可能性があります。
(肘と肩はそれぞれ90度にします)
ライトテスト

写真のように腕を上げた状態で手首の脈が触れにくくなる(拍動減弱)場合はTOSの可能性があります。
(肘と肩はそれぞれ90度にします)
TOSに有効なストレッチ
斜角筋を柔軟に保つことで症状緩和につながります。


上写真は右側が痺れたり痛む方です。
①痛む方の鎖骨の下に手を置き胸を軽く固定するイメージで、首を反対側に倒します。
②その状態からあごを斜め上へ持ち上げるように動かします。そのまま15秒キープします。
1日3回行いましょう。
治療
緊張して硬くなった首や肩甲骨、鎖骨周りの筋肉の柔軟性を向上させることが重要です。
そのため首から肩甲骨にかけての治療を行うと同時に、斜角筋にも電気治療や超音波治療を行います。
また、正しい姿勢を維持することも重要となってくるため、姿勢を維持するための方法や必要な筋肉の強化法などをお伝えします。
物理療法・・・電気治療(低周波治療器、中周波治療器)、超音波治療
手技療法・・・首から背中にかけてのマッサージ
ストレッチ・・・首と肩甲骨のストレッチ

胸郭出口症候群は、日常生活動作や仕事内容、姿勢など多くの要素が症状に影響を与えます。
リスクを最小限に抑えるため、各個人に最適な方法(体の使い方)を見つけていきましょう。